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6話
ぺったりと掌を床につけ、むつは目を閉じている。いつかの時のように、三人と釣瓶火、管狐以外のモノを捕捉しようと探っているのだ。
颯介と祐斗は邪魔をしないように、少しだけ離れた所からむつを見守っている。
目を閉じているむつの脳裏には、船内の様子が見えていた。階段を2階分のぼり、他の客室よりも間隔の開いたドアが並ぶ廊下。右側の真ん中のドア。スイートルームなのか、広い部屋の中の猫足のテーブルに椅子。そこに篠田が肘をついて座っている様子が見えた。
「見付けた。上のスイート」
疲れた様子のむつは立ち上がり、ふらふらと階段をのぼっていく。
「大丈夫そうに見えませんね」
「そうとう、疲れてるのかもしれない。早く片付けないといけないね」
颯介と祐斗もむつの後に続いて、階段をのぼっていく。




