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6話
パーティーホール以外の場所は明かりもなく、釣瓶火が頼りだった。だが、篠田は平然と真っ暗な中を走り抜けていく。運動神経も良いのか、すぐに見失ってしまった。
むつは荒い息を整えながら、足音がどこから聞こえてくるのか、用心深く探っている。
「むつっ」
追い付いてきた祐斗が話しかけようとすると、むつの手で口を塞がれた。じっとし耳をすませていると、どこかでドアが開き、閉まるような音がした。
「苦しいですよ‼」
むつの手を払いのけ、小声ではあったが祐斗が怒ったように言う。
「あ、ごめん。鼻も塞いでた?」
「えぇ、えぇ。むつさん手でかいんじゃないですか?」
「小顔過ぎるんじゃない?腹立つわぁ。それより隠れたみたいだね…1部屋ずつ調べる?」
「それが確実だろうね」
むつと颯介は足音を立てないように歩いていく。湿気を含んだ絨毯のおかげで、祐斗でさえ足音をあまり立てずに済んだ。だが、絨毯の下の板は傷んでいるのか、時折ぎぃっと音をたてる。




