6話
祐斗は曖昧に頷いた。
実体を持った霊たちは、自ら襲ってくる事もなく、ただ無表情に立ち尽くしている。
篠田は相変わらず手摺の所で、にやにやとしている。
「腹立つ顔だなぁ」
すでにイライラしてるのか、むつは動かない霊たちに向かって鞘を振り上げた。みぞおちの辺りを打とうとしたが、それはあっさり受け止められた。むつは、力任せにその手を振り払った。
「祐斗」
むつは祐斗に刀を渡すと、拳を握った。
「ちょ…むつさん‼」
見舞った拳もあっさり受け止められ、手首を掴まれ持ち上げられたむつは、勢いよく膝を上げた。見事にあたり、相手が倒れていくさいに喉元に足をあて腕をもぎはなした。
「祐斗君、ここを抜ける事を優先に」
颯介もむつに負ける事なく、動かない霊の足を払い転ばせていた。祐斗はそんな二人の後ろに隠れるようにして、ついていく。
「ホント、イライラするわ。お腹すいたし余計かな?」
「あぁ、確かにお腹空いたよね。むっちゃんはあんましピザも食べてなかったし…けど食欲戻ってきた?良い事だよ」
動かずにいた霊たちが、むつと颯介に群がるように近付いていく。それをむつも颯介も怖がる事なく、床に転がしていく。




