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6話
体力の消耗の激しい祐斗を連れて、颯介がやってくるのと釣瓶火が戻ってくるのは同時くらいだった。
「祐斗、もういいよ。篠田さんの場所分かったから」
「はい」
「祐斗君の力ってどういう物なの?」
船橋に足をつけ、甲板に背中を預けるという普段なら有り得ない状況ではあったが、祐斗はずるずると座った。颯介も窓に足を突っ込まないよう気を付けつつ、甲板に寄り掛かる。
「干渉出来るみたいなんです…まだ、あんまりよく分からないんですが」
「篠田さんは向こうの強い方に引っ張られて行っちゃったみたいだね」
むつは、ポケットをあさってタバコの箱を出した。箱は濡れてよれよれだが、中身はわりかし無事だった。陰火で火をつけて、久々のタバコをゆっくり味わっていた。
「篠田さんはどこに行っちゃったんですか?」
「古い船の中。それだけは他の船みたいに沈んでないし…たぶん本体だよ」
むつは、とんとんっと灰を落とした。まだほのかに火が残っていたのか、じゅっと音を立てて消えていった。
「そろそろ行こうか。朝になる前になんとかしないと、あたしらもこのまんまだ」




