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6話
煙突から次の船の甲板に飛び移ったが、腐っていたのか足がはまった。板を剥がすように足を引っこ抜き、むつは篠田の姿を探した。
もうほとんど見えなくなっている。舌打ちをしたむつは、人形をポケットから出した。ぐっしょりと濡れているが使えそうだった。手で包んで、ふっと息をふきかける。ふやけて破けそうな人形はそれでもすっくと立った。
「釣瓶火、ごめん。式と一緒に篠田さんを追って。どこに行ったか分かったらすぐに戻ってきてね」
釣瓶火は頷くと式神を頭の上に乗せると、篠田を追ってあっという間に見えなくなった。
もう1体の式神には、颯介と祐斗を呼びにいかせる。
その間にむつは、どこか安全に立っていられる場所を探すように、陰火をつけて船から船に飛び移っていった。