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1話
「おぉ、冷房きいてて涼しいな」
「だね。篠田さんと宮前さんも上がって座ってください」
山上はさっさと座敷に上がると、嬉しそうに笑っていた。あとから続いて入ってきた冬四郎と篠田が座るのを見てから、むつは三人の靴の向きを揃えた。
むつは、座らずに厨房に入っていく。
「何だよ、座ってて良いのに?」
「うん、お水とおしぼり貰ったら座る。あ、あと灰皿もちょーだい」
ビール用の大きめのコップに氷を入れ、水を注いだ物とおしぼりを乗せたおぼんを持つと座敷に上がった。
灰皿をテーブルの両端に置きコースターを並べ、その上にコップをそれぞれ置き、おしぼりを並べるとおぼんを脇に置いてむつもよくやく座った。
「お前、いっつもこんな事してんのか?」
「といちゃん1人だからね。忙しそうな時とかは手伝うよ」
厨房からメニュー表を持ってきた男は、にこやかに頷いていた。
「忙しい時は少ないですけどね、たまちゃんにはいつもお世話になってます。僕は店長の戸井です」
戸井はぺこっと頭を下げた。そして、メニュー表を置くと、決まったら呼んでくださいと言い引っ込んだ。




