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6話
ふわっふわと飛んでいる篠田に障害物はなく、急がないと見失いそうだった。だが、祐斗のおかげで思わぬ協力者には感謝だった。残念ながら、仕事が終わってから会える事はもう無さそうだが。
むつは、沈みかけている船に手をかけて登っていく。塗装が剥げて、錆びているのか手が少しだけ痛かった。
甲板に上がり、篠田の飛んでいく方を見る。何かに引っ張られているのか、むつたちの方を振り返る事がない。
この先には、船の残骸が多く液体の中を歩くより不安定ではあるが、船の上を渡り歩く方が早そうだ。
「祐斗、大丈夫?」
颯介に手をかして貰い、何とか登ってくる祐斗はすでに息が上がっている。汗も異常なくらいにかいている。
「篠田さん、向こうにいきそうで…引き留めるのが」
「颯介さん、祐斗とここに居て」
むつはすでに小さくなりつつある篠田を追って、走り出した。斜めになっている船に飛び移り、転げ落ちそうになったが煙突に手をかけてそれを免れる。




