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6話
口では暢気な事を言いつつも、三人の顔は明らかに緊張している。今から霊が沢山いるのを分かって、海に入ろうとしているのだ。むつの側に居た釣瓶火は、むつの服の中に入った。
首元から少しだけ顔を出し、精一杯照らしてくれていた。どうやら逃げる事はせずに一緒に来てくれるようだ。
「やっぱ、手繋ぎましょうか」
「祐斗に賛成」
むつは二人の間に入ると、左手で颯介の手を右手で祐斗の手をしっかりと握った。
波打ち際まで、クラゲのような霊が来ている。三人は躊躇うように立ち止まった。
「行こう、か」
むつが先に1歩を踏み出し、ちゃぷんっと水の中に足を入れた。そこまでは良かったが、なかなか次の1歩を踏み出す気になれない。
だが、行かないわけにもいかず、ゆっくり1歩ずつ三人は海に入っていく。ひざのあたりまで海水につかると、様子を伺うように霊たちが集まってきた。
三人ははもう会話をする余裕もなく、ただぎゅっと握った手を放さないようにしながら、海に入っていった。




