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1話
山上は、むつが立ち止まった事に気付いた。冬四郎も少し離れた所で立ち止まり、山上と篠田を待っていた。
「こんな様子のままなら、今回は俺も参加した方が良さそうな気がするな」
「沼井が絡んできてるかもしれないのにですか?」
「お前とみやに、むつを預けるのが不安なんだよ」
山上はそう言うと、流れる汗を拭った。篠田も額に汗を浮かべていた。20分くらいは、歩いたのかもしれない。帰りもこの距離を歩くのかと思うと、嫌になりそうだった。
「西原も居ますよ」
篠田はポケットから出したハンカチで、額に浮いた汗を拭いた。
「それはもっと不味いだろ」
「何でです?」
「むつの元彼だ」
「何でそんな事、知ってるんですか?」
「みやには言うなよ。あと、これもだ…一応、むつの身辺調査はしてあるんだ」
山上がそう言うと、篠田は納得したように頷いた。