6話
冬四郎が西原を引きずって歩く隣には、片車輪が付き添っていた。それを見たむつは、大丈夫そうだなと思い颯介と祐斗の所に戻った。
「どうしますか?」
三人は歩きながら作戦を練る事にしたが、いつものように出たとこ勝負になるのは分かってる。
「ボートで沖に行く」
「その後、その後」
むつは困ったような顔をしている。
「作戦考えるだけ無駄っすよね」
「だってさ、結局あれが海面に出てきた所、見てないもん。…何あれ」
「ですよね、俺にも分かんないっす」
「じゃなくてさ、何あれ」
むつは颯介と祐斗の服を引っ張った。
「だから…って何すかあれ」
「さぁ…?」
祐斗と颯介もようやく、むつが何を言っているのか分かったようだ。三人は足を止めて、海の方を見ている。
上空にかかっていた1ヶ所にだけ留まり、だんだんと濃くなっていく。
「上は霊が集まってますね、どっから来てるんでしょうね」
「下のもそうかな?」
むつに言われ見てみると、海水全体が白く濁っている。三人は防波堤に上がり目を凝らしてみた。
水中にも霧がかかったように漂っていたが、そうじゃなかった。上空に居るのと同じように、数え切れない程の霊がふよふよとクラゲのように漂っている。