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5話
「むっちゃん、篠田さんは?」
「連れてかれた」
「何処に?」
「たぶん、あそこ」
むつは海の沖合いの方を指差した。
「あぁやって夜になると人を連れてくんや。仲間にしようとしてな」
祐斗と共に居た片車輪が、からからと車輪を回してむつたちの所に来た。
「海に入るしかないのかな?」
「そうだね…夜のうちじゃないと…昼間は姿を現さないし」
むつはポケットから札と人形を取り出して、何枚あるか数えた。そして、少しだけ首を傾げた。
「しろーちゃん、西原さんをホテルに連れてって寝かせといて。あと、あの網を片付けといて。その間に篠田さんのお迎えに行ってくるから」
「いや、俺も」
むつは、冬四郎の腕をぎゅっと掴んだ。すると冬四郎は、顔をしかめた。
「筋を痛めた、かな?」
「誰かさんが重たくてな」
「そう?じゃあ、早めに治して。ほら、また上から落ちてくる子が居るかもしんないし」
「普通は落ちてこないだろ。まったく」
むつは、寝かされている西原の身体の下に手を入れて、上体を起こさせた。冬四郎は西原の脇の下に肩を入れ、何とか立ち上がらせた。
「お願いね」
むつがそうっと冬四郎の頬に触れた。