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5話
「ヤバい‼」
むつの前を行く釣瓶火が、周囲を明るく照らしているおかげで何が起きているのかがしっかりと見えていた。
篠田と西原が霊の集団に囲まれ、連れていかれようとしている。すでに足は地面から離れていて、手を伸ばしても届く距離ではない。
少し前を走っている冬四郎と颯介にも、篠田と西原の様子が見えたのだろう。どうしようかと、むつの方を振り向いた。
「颯介さん、止まって‼手貸して‼飛ぶ‼」
颯介はどういう事か分かったのか、立ち止まり手を組んだ。むつは立ち止まる事なく、颯介のその手に足をかけた。そして、颯介は力任せにむつを放り投げた。
タイミングが良かったのか、むつは高く飛び上がった。西原には届きそうかと思ったが、少し足りなかった。むつは手を伸ばして西原の足を掴んだ。
「むつ‼…っつ、おぉう」
足を掴んだむつは、すぐに大きく身体を揺らした。それに合わせるように西原の身体も揺れた。
身体を弓なりにし、むつはさらに上に飛んだ。ポケットに手を突っ込み札を取り出すと、うっすらとした霞のような霊たちに向かって投げた。




