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5話
篠田と西原の意識が、片車輪の方に向いているうちに、むつたちはそっとその場から離れた。辺りが暗いおかげで、気付かれる事はなかったようだ。
「むつさんは足音立てずに動くのうまいですよね」
「泥棒になれるかも…それより、何で来ちゃったのしろーちゃん」
篠田たちから距離を十分に取ってから、むつは立ち止まり振り向いた。少し後ろには、冬四郎が立っていた。祐斗も颯介も気付いていなかったようで、驚いた顔をしている。
「部外者は来ないで」
「俺が依頼した仕事だからな」
むつは溜め息をついた。
「宮前さん、心配なのはわか」
颯介が言いかけたのをむつの手が塞いだ。
「近付いてます、物凄く早い」
祐斗が先に走り出していた。むつもどういう事か分かったのか、来た道を急いで戻る。
「離れるべきじゃなかった‼」




