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5話
むつは西原と篠田に挟まれて、困ったような顔の片車輪をちらっと見ると、にやっと笑いひらひらと手を振った。
颯介と祐斗も海の方が気になるようでむつの隣に立ち霧のかかっている方を見ている。
「あの二人は、あれで大丈夫だね」
「押し付けたんだね」
むつはふふっと笑った。
「どうします?」
「行ってみたいと思うけど…手漕きボートじゃしんどいよね。ねぇ祐斗」
「大量の霊が集まるとかって1回きりでしたよね。ま、昨日の今日ですけどね。濃いぃ感じよりも…どす黒い雰囲気があって、近付きたくないですよ」
「大量の霊が集まってるのが、あの沖のやつかな?浜辺から人も消えたりしてるっぽいから生身の人間もオッケーって事か。…それで片車輪が暴走して人を近付けさせないようにしてたのか。あんなに密集したら息苦しそう…何を目的としてんだろ」
「おぉ‼お嬢ちゃん」
篠田に顔やら車輪やらをペタペタ触られている片車輪が、迷惑そうな顔をしてむつを呼んだ。
「あのな…」
何かを言おうとして、片車輪は篠田から逃げるようにむつの所に来た。




