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1話
「まぁ、大丈夫だろ。とりあえず」
「それより…彼女は、どこまで信用出来るんですか?沼井の事は、宮前君が話したんですか?」
篠田は遠目にむつの背中を見て、視線を山上に移した。山上は、じんわりと浮かんできた汗を手の甲で拭った。
「あぁ、みやに話すように言った。信用も何も沼井との接触はないからな、単独で調べようとして沼井に目を付けられてはいるけどな」
「何でまた、あんな子が?」
「そりゃ、俺の所に居るからな。みやが沼井からの仕事を持っても来てるしな」
「本当の所は?」
山上は、じろりと篠田を睨んだ。
「むつの事は気にしなくて良い。信用もしていい。沼井の裏の調べがついたら…お前も含めて色々話さなきゃいけない事がある」
「沼井の裏ですか…ま、何となくですけど。今は彼女を沼井から守らなきゃって所みたいですね」
篠田は、からかうように笑った。