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5話
「お嬢ちゃん、きれぇに切ったもんなぁ。そない痛なかったわ」
しゃがれた声で片車輪は笑った。元の大きさに戻る、とむつとあまり目線の高さは変わらないくらいだった。
「それで、片車輪。海神様に何を言われてるの?」
「何か聞いたんか?」
片車輪の額に少しだけ汗の玉が浮かんでいる。
「あんまり苛めるなって言われたから、鎮めるべきはあなたじゃないって事よね」
「せや、海のやつや」
うんうん、と腕を組んで片車輪は頷く。まだ完全に腕がくっついて居ないので、肩の所で式神が慌てている。
「知ってる事を全部話して貰いたいな」
「お嬢ちゃん…あそこに行ったんやな、神の庭の匂いがするなぁ。普通の人とちゃうんやな」
普通の人と違うと言われ、むつはむっとしたような顔をした。そして、少しだけ周りの目を気にした。




