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5話
海神という言葉を聞くと、片車輪は黙った。そして、もくもくと黒い煙を上げつつ炎を消した。炎が完全に消えると車輪が、ゆっくりと小さくなっていく。
それを見たむつは、懐中電灯をつけて西原に持たせると、自分は腕を拾いあげた。
「もう紐放していいよ」
「けど、危ないですよ」
祐斗の叫ぶような言い方に、むつはにやっと上から目線で笑う。微かな懐中電灯の明かりが下からむつの顔を照した。あまり夜には、出会したくないような顔だった。
「このサイズなら…大丈夫」
むつは日本刀を見せびらかすようにしつつ、刀身を鞘におさめた。
「余計な事したら、殺されるんやな」
「そういう事、大人しく話し合いする気になった?」
網から解放された片車輪だったが、まだ動く事は出来ないようで、歯軋りをした。
むつは腕を切り口に押し当てた。颯介と冬四郎の肩から降りてきた式神が、むつに代わってその腕を切り口に当てている。
「ちょっとしたら、くっつくよ」




