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5話
街灯が少なく、懐中電灯の明かりがなくなると真っ暗に近くなった。むつも木の影に隠れ、じっと様子を伺う。
網の上に置かれた腕は、闇夜の中で苦しむかのようにぴくぴくと動いていて気味が悪い。
むつはそっと草の上に片膝をついた。そして、日本刀をぎゅっと握った。
音も明かりもなかったが、ふいに赤く細い光がむつたちの前を通りすぎる。すると上の方から、微かに悲鳴のような声がした。おそらく祐斗だろう。
むつは、ポケットから人形を二枚取り出すと、掌をで包んでふっと息を吹き掛け上に投げた。
颯介と篠田、祐斗と冬四郎に分かれている二組に、1体ずつ式神を側に居させようと思ったのだ。1体は無事、颯介の肩に上れたが、もう1体は冬四郎の肩に上らせてしまった。暗く、よく見えなかったから仕方ない。
「来る」
「どっちだ?」
西原は少し身を乗りだし、道路の様子を伺う。むつも、そっと木の影からのぞいた。
 




