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5話
部屋に戻ったむつは、携帯のアラームを設定して、服を脱ぐとベッドに潜り込んだ。きちんと清掃してくれているようで、糊のきいたシーツと清潔な布団から微かにシャボンのような香りがした。
また、冬四郎と気まずくなるんだろうな、とむつは後悔し泣きそうになった。浮かんできた涙をごしごしこすると、無理矢理にも寝ようとした。
無理矢理、寝ようとせずとも海に潜った疲れもあり、あっという間にうとうとし始めた。眠る時には、流石にあの、ぼんやりとした輪郭だけの人は思い浮かばなかった。むつは少しだけ安心したが残念にも思った。
特に夢を見る事もなく、むつはぐっすりと眠る事が出来た。あまり長い時間眠れたわけではないが、身体はだいぶ軽くなった気がする。
顔を洗って髪をとかして、ランドリーに洗濯物を取りに行き、適当にバッグに放り込んだ。そして、荷物を持つとむつは部屋を出た。




