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5話
「走馬灯もたぶん嘘じゃないよ。一種だと思う」
唇が乾燥するのか、ちろっと舌で唇を舐めて潤すとむつは言いにくそうに話始めた。
「その、意識がなくなっていく時に思い浮かんだ顔があったの、ぼんやりしてて誰か分からなかったけどね。それを海神様はお見通しだったみたいで…それが誰なのか決まってても気付いてないだけなんじゃないかって言われて」
むつは、ちらっと冬四郎を見た。特に笑っている様子はなく、真剣な表情で聞いてる事が分かると何だか緊張した。
「それをさ…皆の前で言いたくなかったの恥ずかしいしね、っていう話です、はい…うん」
冬四郎が黙ったままでいるのに耐えられないのか、むつは顔をだんだんと赤くして下を向いていった。
「そんな事か」
ぽんっとむつの頭に手を乗せた冬四郎は、優しく撫でながら安心したようだった。
「また、何かあったのかと思ったよ」
「また?」
口を滑らせたかなと思い、冬四郎は黙った。




