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5話
何となく警戒するように、むつは少しだけ冬四郎から離れた。
「何でしょう」
警戒するあまり、変なイントネーションになってしまい、むつは恥ずかしそうに膝の上に額をつけて顔を隠した。
「何だよその変な言い方…まぁいいや。さっき、神様に呼ばれた時の話してくれただろ?何か誤魔化したよな?走馬灯の所。ホントは何だったんだ?」
やっぱりバレてたのか、とむつは溜め息をつくしかなかった。あまり言いたくはないが、不審に思った以上、どう嘘をついても冬四郎が追求を止めるとは思えなかった。
突っぱねてまた不仲になるのと、からかわれるのを承知で本当の事を話すべきなのかと、むつは悩んだ。
「そんなに言いたくない事があったの?」
冬四郎の優しい声にむつは顔を上げた。不審に思ったからではなく、心配をさせているのだと分かった。
それなら話すしかない、むつはそう思うと足を床に下ろした。そして、少しだけ冬四郎の方に身体を向けた。
「笑わないでよ、絶対に」
むつはそう念を押した。




