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5話
「まぁとりあえず、やってみようか」
針金を切る用のミゼットカッターを持ち、西原も戻ってきた。
「ほら、頼まれてたもん」
西原は、文房具店のロゴの入った紙袋をむつに渡した。むつは中身を確かめて頷いた。
「ありがと。じゃ、あたしはちょっと」
「ん?むっちゃんは何するの?」
「そうだ、それも何に使うんだ?」
むつは紙袋からパラフィン紙と筆ペンを出すと机に置いた。そして、自分の鞄の中から紙の束を出した。
「札を書く。動きを封じる為の物を、それをパラフィン紙で包んで針金の間に入れる」
「なるほどね、それなら捕まえる事も出来そうな気がするね」
そう言うと颯介も針金を片手に、網の補強を始めた。みんなが、それぞれやっている間にむつは、紙に筆を走らせていく。
「祐斗、ちょっとお願い」
「はい?」
不器用ながらも針金を巻いていた祐斗を呼び、むつは書いたばかりの札を渡した。
「そこの紙で包んで」
「糊とかは?」
「使わずに、こうやって…」
むつはパラフィン紙を切り、その上に札を置き、綺麗に折っていく。手本を見せると、それを渡して
「お願いね」
と言うと、再び札を書く方に専念した。




