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5話
ごみをまとめて大きな袋に入れ、パイプ椅子を畳んで端によせ、机もどけ部屋の中に大きく空いたスペースを作った。
そこにむつは、西原が調達してきた網を広げた。漁業用の使い古したような網ではあったが、しっかりと使えそうだった。むつが千切った部分は、意外と目立たない。
「どうするんですか?」
「網の紐にそって太い針金を添えて、細いやつで巻いて止めながら強度を出すようにしようかと」
「網必要だったか?」
冬四郎の意地の悪そうな視線を気にする事なく、むつは笑った。
「針金だけじゃ、引っ張れないでしょ?」
「引っ張る?どう捕まえるんですか?」
「えーっと、口で言うのは難しいな…」
そう言うと隅っこに片付けられたホワイトボードの前に行くと、むつはペンを持った。
「こう、木の枝で端の紐を持って、あいつが来たら、紐を引っ張りながら木から降りるの…そした、片車輪も宙に浮くから動けないし、危ない事もない」
「わくわくしますね」
むつの説明を聞き、篠田と何故か祐斗までもが楽しそうに相槌をうっている。この二人は気が合うようだ。