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5話
両親を海神が知っていた、とは冬四郎の前では言いにくかった。どの会話なら話しても大丈夫だろうかと悩んでいると、ふと大切な事を思い出した。
「あっ、そうだ‼」
むつの突然の大きな声に男たちは、驚いたような顔をしている。
「片車輪を苛めるなって言われたの。片車輪と海神様はお知り合い、か?」
むつは深く背もたれに寄りかかると、下唇を指先で撫でながら、ぶつぶつ言い始めた。
「誰か…誰かっていうのは人に限定してたんだったら、まぁ知り合いでもおかしくないか。人じゃなきゃあそこへ行けるみたいだし…あー分かんない。何でちゃんと質問に答えてくれなかったんだろ、けちっ」
紙コップの中のコーラをぐいぐい飲んで空にすると、とんっと机に置いた。すると、祐斗がすぐさま紙コップをコーラで満たしてくれた。
それを飲もうとして、むつは視線に気付いて顔をあげた。考え事をして呟いてたと思ったら怒りだす、そんな事をしていたら誰でも気になるのは当たり前だ。
「結論、出たかい?」
颯介がにやにやと笑っていた。
「えーっと…出なかった。とりあえず、海神に妖を鎮めるよう言われたから、頑張りまーす」




