199/309
5話
「冷えたのかな?」
篠田が上着を脱いでむつの肩にかけた。よく見てみると、かなり寒いのか唇の色もよくない。篠田は立ち上がると、颯介と冬四郎を呼んだ。
「先に身体を温めさせないと」
「そうですね、外に出ましょうか。ここじゃ濡れた身体も乾きませんしね」
そうと決まると冬四郎は、篠田の上着をかけたむつを抱き上げた。颯介はむつの服をかき集め、篠田と祐斗はシュノーケルセットと懐中電灯を持って日差しのさしている方に向かって、歩き出した。
「しろーちゃん、歩けるって
「まともに立てないくせにか?落とすと困るからじっとしといてくれ」
冬四郎の腕から逃れようと、手足をバタバタさせていたむつだったが、じろっと睨まれ、何とも言えない顔をして手を引っ込め、少しだけ身動ぎをした。
「けど…重たいでしょ?」
「そうだな」
「酷いっ‼」
引っ込めた手を伸ばして、冬四郎の額をぱちんっと叩いた。




