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5話
冬四郎と颯介の肩を借りて岸に上がったむつは、疲れていたのか立っているのもままならなかった。
冬四郎にすがるように掴まって、何とか立っていたものの、ずるずると座り込んだ。ぺたんと座ったむつは、両手をついて大きな溜め息をついた。
「むっちゃん、何があったの?」
颯介が膝をついて、むつの顔を覗き込む。むつが無事に戻ってきた事に、安堵はしているようだが、まだ険しい表情をしていた。祐斗もまだ手放しで喜べない状況なのだと察したのか、笑顔を引っ込めた。
「神社の主に呼ばれた」
「呼ばれたって、どこに行ってたんだ?」
どういう事なのかと、篠田も興味を持ったのか颯介同様に膝をついて、むつを見ている。その目は、きらっきらと輝いている。
「か」
むつは喋ろうとしたがすぐに口をつぐむと、口に手を当てた。
「か?」
「っくしゅん‼」




