193/309
4話
お酒の好きな人なのかな、とむつは思いお猪口の中身を頑張って減らした。
「君とはもう少しゆっくり呑みたいが、長居をさせるのはよくないからな。帰らせないとな」
「あの、その前に海を荒らしている妖については教えて頂けないのですか?」
もう徳利に入っている酒も少ないのか、老人はむつのお猪口と自分のお猪口に半分ずつ酒を入れた。最後の一滴も逃さぬようにと、徳利の底をとんとんっと叩いた。
「両親より妖か?両親の事や己の事を知りたいとは、思わないとな?」
「思いますよ。両親の事を話してくれる人は居ませんからね…けど、今は妖を鎮めるという仕事がありますし。両親が居ないからと泣く程、子供でもないですし側に居てくれる人も居ますから」
むつはそう言うと一気に酒を呑んだ。
「それは最期だと勘違いし、思い浮かべた人の事だな」
「誰だか分かりませんでしたけどね」




