190/309
4話
大昔の家という感じがして、少しだけ興味が湧いたがそれどころではない。むつの前に徳利とお猪口を二つ置くと、隣に老人が腰を下ろしたからだ。
「わたしが君を呼んだ理由が分かるかい?」
「いえ、お会いした事はありませんし」
老人はむつにお猪口を取るよう促した。むつが手に取るとそこに滑らかだが、透明な液体が注がれた。そして、むつは徳利を受け取り、老人の持ったお猪口にも同じように注いだ。
「誰かと呑むのは久しぶりだ」
「いつぶり、なんですか?」
老人がくいっとお猪口の中身を流し込んだ。むつも同じように飲み干す。日本酒のようで、喉の奥が熱くなるのが分かった。
「さて…100年は経ったか?」
むつが再びお猪口に酒を満たすと、老人は嬉しそうに笑い飲み干した。
「そんなに前からお一人で?」
むつは自分のお猪口にも酒を入れると、今度は舐めるようにゆっくり呑んだ。




