4話
「そうだ。わたしがあの神社の主だ。そして、お前さんをここに連れてきたのもわたしだ」
「何故ですか?」
老人は、むつの問いに答えずに背を向けて歩き出した。むつがついてこないのが分かると振り向き、手招きをした。
ついて行きたくは無い。そうは思ったが、死んでいる以上、怖いものもないし何より一人で居るのは寂しかった。むつはゆっくりとついていく。
むつの前を行く老人は、青々とした草の上を滑るように進んでいく。神ともなれば浮いているのかと、足元を見てみると、腰から下は蛇のようになっている。なるほど、それで滑るように進むのかと思った。
着いた先は、小さな小屋だった。小屋の横には川が流れていて、水車がかたんっかたんっとゆっくり回っている。初めて水車を見たむつは、面白そうにその動きを眺めていた。
「お入りな」
水車を眺めていたむつに老人は笑いかけた。むつは、照れたように笑みを浮かべ、小屋に足を踏み入れた。
「お邪魔します」
「そこに座りなさい」
囲炉裏の前を指差され、むつは大人しく座った。囲炉裏には、つい先程までそこに居たかのように僅かながら火が残っていて、掛けられたやかんを暖めている。
 




