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4話
むつは水中の鳥居に手をかけると、颯介に向かって手を上げた。そして、本殿を調べようと合図を送った。本殿まで颯介に手を引かれて行くと、柱なんかにライトを当てた。
水中だというのに、藻など水草が生えている様子も腐りかけている様子も全くなく、真新しいのではないかと思うほどに綺麗な状態だった。
むつは、ここは特別な場所なのだと思った。水に沈んでしまったとは言えど神聖な場所であり、まだそこにおわす方が居るのだと。
ぞっとする程に冷たい水が、むつの頬を撫でた。颯介の方を見ると、何かに気付いた様子はなく、本殿の中にライトを当てていた。
止めさせなくてはいけないと思い、颯介に近付こうとすると、本殿の扉の向こうから視線を感じた気がした。
そして、不意打ちのように冷たい海水が生きているかのように渦を作り、むつを取り巻いた。あっと思った時には、ゴボゴボっと息を吐き出してしまっていた。




