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4話
むつと颯介は、一気に潜水して底を目指した。何度となく浮上していては、体力の消費が激しいばかりだからだ。
むつが狙いを定めた場所で、真っ直ぐに潜りながら、ゆるやかに懐中電灯の光を色々な方向に向けていく。すると何かが光を反射させるように、ちかっと光った。
颯介もそれに気付いたのか、ライトを1ヶ所に向けた。二人は水中で顔を見合わせた。颯介が真下を指差して、潜ろうと合図をしたが、むつの息が続かなかった。
むつはゴボゴボと息を吐き出しながら浮上したが、颯介はそのまま潜っていった。
「ぶはっ…はぁ、はぁ」
ぷかぷかと浮いたまま、呼吸を整えていると後からゆっくりと上がってきた颯介は、息を切らせる事なく平然としている。むつには、それがちょっぴり羨ましかった。
「何が見えた?」
「小さいけどあれは神社みたいだね。鳥居もあったし」
「水の中に?」
むつはゴーグルにかかっている髪の毛が邪魔になっているのか、顔を振っている。
「昔は陸地だった、とか?」
「可能性はある…海神様かな」
「場所的に言うなれば、それしかないと思うけど」
 




