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4話
「何で俺が漕ぐ係りなんだ?」
「そりゃ体力があるからでしょ?」
冬四郎は額に浮いた汗を拭い、文句を言いつつもオールを動かしている。祐斗は申し訳なさそうに笑っている。
「はぁ…日に焼ける」
むつはパーカーのフードをかぶって、太陽の光を浴びて、きらきらと輝く海に手を入れている。
「お前、その眼鏡どうしたんだ?」
「さっき買ってきた。伊達でもないよりましだから、気分の問題だけどね」
「ふーん?で、どこまで漕げばいいんだ?」
水から手をあげて、指を指した。むつの指差す方には崖のようになった岩場がある。左右を岩に囲まれ細くなっている方に行けという事らしい。
「そこまで遠くはないな」
「むっちゃん、何であそこなの?あれを見たのってもっと沖の方なのに?」
「あそこ、窪んでるの分かる?」
颯介はオールを動かす手を止めて、むつの指差す方をじっと見た。
「分かる、けど…また洞窟?」




