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4話
「むつさん、あれ」
祐斗は懐中電灯を足元からゆっくり上にあげた。ライトが照す先には石で出来た台とその上に小さな祠があった。
「何ですかね?」
「何かをお祀りしてるんだろうね」
懐中電灯を持っていないむつは、青白い炎を指差しに灯すと祠に近づいていった。
祠の目の前まで行くと指差しあった炎を手のひらに移して、炎を大きくさせた。懐中電灯は、いらないんじゃないかと思う程に明るくなった。
「だいぶ放置されてるみたいね」
潮風にさらされて劣化し、触れば崩れてしまいそうな佇まいの祠の小さな扉をむつはそうっと開けた。
顔を近付けて中を見ると、小石を積み上げたものにしめ縄が巻かれた物とお供え物をしていたのか、小皿とお猪口が置いてあった。
むつはしばらく、微動だにせずそれらの物をじっと見ていた。
「何があったんですか?」
祐斗が覗き込もうとするとむつが、襟をつかんで止めた。
「うぇっ…むつさん‼」
「これは供養塔だと思う、祐斗は見ない方が良いんじゃない?」
そうは言われても気になるのか、祐斗はあまり近付く事なくそっと中を見た。冬四郎ものぞきこんでいる。




