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4話
むつはまだ汗が引かないのか、手をパタパタと動かし風を送っている。
「まぁまぁ、俺は宮前さんが一緒に来てくれたんで嬉しかったですよ…とりあえず奥まで行きますか?」
むつと冬四郎が言い合いを始めそうな気がした祐斗は、二人の間に割り込んだ。
「そうだね…ってやっぱり怖いの?」
「へ?」
「真ん中に来たから。けど、あんましこっちに寄らないで汗臭いと思われたくない」
「そんな事っ…むつさんはいっつも良い匂いしてますよ」
むつは少しだけ恥ずかしそうに、唇を噛んだだけで何も言わなかった。
「とりあえず行こう、ボート颯介さんに任せてるからさ」
そう言いと懐中電灯もないのにむつが先に歩き出した。祐斗はむつの隣に並ぶと懐中電灯で、足元を照した。
「ボートなんか借りてどうするんだ?怪しいのはこの洞窟なんだろ?」
二人の真ん中あたりで少し後ろをついてきている冬四郎が、首を傾げていた。
「そうなんだけどね」
むつは1歩、祐斗より後ろを下がり冬四郎に並ぶようにすると、昨日の洞窟での出来事を簡単に話した。




