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4話
ごんごんごんっと固い音を響かせて、何かが後ろから急速に近付いてくるのに祐斗と冬四郎は気付いた。
「何でしょうね」
「さぁ?気味悪いね」
二人は立ち止まって、懐中電灯を音の方に向けてみた。音はするものの、何も見えない。祐斗に、じりっと後ろに下がった。冬四郎は祐斗の少し前に立ち、音の方を見据えていた。
ごんっごんっ、と音はだんだんとゆっくりになっていった。
「っはぁ…追い付いたっ」
はぁはぁと荒く息をつくのが聞こえた。もう祐斗の持っている懐中電灯の光が辛うじて届く範囲に見えていた。
「むつさん?」
「あつっ…もぅ…意外と奥に進んでて」
息を整えながらむつは、歩いてきた。懐中電灯で照らすと眩しそうに目を細め、顎に流れてきた汗を拭っていた。
「どうしたんですか?」
「どうした、じゃ…ないって…はぁ…昨日あんな事が起きたってのに一人で行くなんて」
「宮前さんが一緒ですけど」




