4話
むつはトタン屋根のボロボロの小屋の簾を押し上げて、中をのぞきこんだ。古びた扇風機が、カタカタと鳴りながら首を振っていた。
「すみませーん」
声をかけると、奥から年配の女性が出てきた。日に焼けていて真っ黒で、髪の毛も潮でなのかばしばしだった。
「ボート借りたいんです」
「15時までで3千円ね、過ぎたら15分につき500円だけど」
何だか駐車場みたいな料金システムだなと思ったが、むつは笑顔を浮かべ財布から千円札を3枚取り出して渡した。
「繋いでるチェーンの鍵ね、無くさないように」
「はい、ありがとうございます」
女性は鍵をむつの手のひらに乗せると、さっさと奥に引っ込んだ。むつは、少し寂しい奥を気にしたが特に思う事もなく外に出た。
海辺の程近く、杭を打ちそこにチェーンでボートを繋いでるだけの場所でむつは鍵に書かれた番号のボートを探した。あまり利用する人が居ないのか、底に穴の空いたボートなどもそのまま置いてある。
むつはチェーンを外して、ボートを押して海に入れた。オールを4本入れ、ズボンの裾をまくりあげ浅瀬にボートを浮かべたまま引っ張って、むつは戻っていった。




