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1話
1階に着き、外に出ると痛いくらいの日差しにくらくらした。天気はよく湿度も低く、からっとした暑さだった。
道に案内をする為、むつが先頭に立って歩き出した。山上が隣を歩くかと思ったが、意外にも不機嫌そうなままの冬四郎だった。むつも気まずく思っているのか、二人は無言だった。
そんな様子を少し離れた後ろで、山上と篠田が興味深そうに見ていた。
「あの二人ってどういう関係なんですか?」
「ややこしい関係だな、お前…だいぶ、むつが気に入ったみたいだな」
流石に暑いのか篠田は、上着を脱ぐと腕にかけた。
「えぇ、とっても。可愛らしいし、不思議な力があるってなったらそりゃもう」
篠田の視線は真っ直ぐにむつに向けられている。その目は子供のように、きらきらとしている。まるで、ヒーローを目の前にしているかのようだった。
「相変わらず、だな。ったく…むつにあんまちょっかいかけんなよ、うちの数少ない労力なんだしな」
「労力、ですか。本当の理由は、そんな事じゃないでしょうに」




