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4話
私服に着替えさせられた篠田と冬四郎は、何となく落ち着かない様子で三人の後ろをついてきていた。
むつと祐斗は楽しげにお喋りをして、時おり身体をぶつけあったりしながら、楽しそうにしている。会社の先輩らと海に連れてきて貰った後輩たち、という風に見えなくもない。
くるっと振り向いたむつは、シュノーケリングセットを手に笑いながら颯介に
「真っ直ぐに岩場に」
と言った。その声は無邪気そうな笑顔とは裏腹に落ち着いた、静かな声だった。
颯介も笑顔のまま頷いた。
家族連れやカップルで賑わう砂浜を横切りながら、むつと祐斗は岩場の方を見ていた。向こうには人は居ないようだった。
「岩場は泳ぎにくいし滅多に人が来ないんですかね?」
岩場が近くなるにつれ、人の声が遠ざかり静かになっていく。そして、初めて来た時と同様に嫌な感じがしていた。
「だろうね、カップルとかは居そうだよね」
「人気ないですもんね」
むつの思ってる事と祐斗の思っている事は、少しだけ違っていたが会話をするのに問題はなかった。




