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4話
むつは、篠田に斜め前に座り、後ろをむくと机に片車輪の太い腕をでんっと置いた。篠田が少し身を引いた。祐斗と颯介もむつが何をするつもりなのかと、興味深そうに机の側によってきた。
「いいっ‼」
机に置かれた腕は、じゃんけんの時のグー、パーするように手のひらを動かして、のっそりのっそりと机の上を動いていく。
「むっちゃん、こんなのと一晩過ごしたの?」
「札あったから動いてないと思うけど…やっぱり動くんだね」
むつは、机の端から落ち床を這っていく腕に札を張ってから拾った。
「動くとは思わなかったのか?」
西原はむつの手から、片車輪の腕を取ると、引っくり返したり上にある、持ち上げて蛍光灯で透かしてみたりしている。
「うん。今、断面とか見てたら血管は塞がってるけど、何か脈打ってる感じがしたから動くかなーって思って」
西原と言い、むつと言い無遠慮にも程があるのではないかと、祐斗はこっそり溜め息をついた。




