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4話
むつは冬四郎の後に付いて、皆が待っている部屋に入っていった。車内でも無言だったせいか何だか気まずかった。そんな雰囲気を察したのか、部屋に入るとすぐに祐斗が駆け寄ってきた。
「おはよーございます」
「おはよ」
むつは祐斗の頭をぐりぐりと撫でた。そして、空いている机にジャケットに包まれた腕を置くと、篠田と西原に向かってしっかりと頭を下げた。
「昨夜はご迷惑、ご心配おかけして申し訳ありませんでした」
「もう大丈夫ですか?」
篠田の気遣わしげな優しい声にむつは、はいと言いもう1度頭を下げた。
「それは良かった。…で、それも持ち歩いて大丈夫ですか?」
篠田は好奇心と嫌悪の混ざったような視線を、机の方に向けた。
「大丈夫だと思いますよ」
むつはジャケットに張ってある札を剥がすと腕取り出した。軽々ととは言いがたいが、あまり嫌がる素振りもなく腕を持っている。
「取り返しには…来るでょうね」
切られた断面なんかを監察しつつ、指先でつついたりしている様子を篠田は引き気味に見ていた。
「取り返しにって、切り取ったらくっつかないでしょ?一晩経ってるんですよ?」




