4話
「服着てくれ」
むつは、部屋の奥に引っ込むと下着を身につけているのか、ゴムのパチンと鳴る音と、痛いっという声が聞こえた。
「もう大丈夫だよ、着た」
「全部着ろ」
冬四郎がそう言うと、しゅるっと布のこすれる音が聞こえてきた。思った通り、下着しか身に付けてなかったようだ。
冬四郎がドアにもたれて腕を組んでいると、むつが顔を出した。ちゃんと服も着ていた。
「もうちょっと待って」
むつがバスルームに入っていくのを見送ると、冬四郎は部屋の中に入り、ベッドに座った。椅子にはむつの服や鞄が置かれていたからだ。
バスルームからドライヤーは音が聞こえてきた。冬四郎はする事もなく、むつの支度が整うのを待っていた。
髪の毛を乾かし終えたむつは、鞄から櫛とポーチを出して櫛を冬四郎に渡すと隣に座り背を向けた。
「とかせってか?」
「うん、やって。その間に化粧」
冬四郎の指が首に触れ、むつはくすぐったそうに身動ぎした。
「彼氏にして貰えばいいだろ」
「今は居ないもん」
毛先から櫛を通して、少しずつ上から下に向けて、櫛を通していく。とかす必要がないんじゃないかと思うくらいに、さらさらだった。




