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3話
「ごめん…大丈夫」
むつは起き上がると、すんっと鼻をすすった。そして部屋に居る他の四人をぐるっと見ると、掛け布団を鼻の上まで持ち上げた。
「それ、札はっといて」
布団の中から腕を伸ばして、テーブルの上にあるジャケットを指差した。
「札はどこですか?」
むつの様子が気になっていたのか、誰も何も言わずにいたが、祐斗だけは違った。
「鞄の中にあるはず」
祐斗はむつの鞄を開けるのを躊躇い、そのままベッドの上に持っていった。むつは、鞄の中から何枚かの札を出すと祐斗に渡した。
「お願いね」
むつの涙に濡れた瞳で見つめられ、祐斗は顔を赤くして頷いた。祐斗はいそいそとテーブルに向かい上にある、ジャケットの上から札をはりつけた。




