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3話
「大丈夫…あれ回収、ホテルに」
むつは荒い息をつきながら、途切れ途切れに言った。そして、そのまま目を閉じ黙ってしまった。
「気を失なったみたいです」
心配そうに祐斗が駆け寄って行くと、西原が首を振りながら小声でそう教えた。
「回収って…あれですか?」
西原がむつを抱き上げ、車の助手席に乗せているのを横目で見ながら祐斗は、放置されている腕を見た。
「だろうね。それともバイクかな?」
切り落とされた部分から血が流れ、水溜まりのようになっている。颯介は車に戻り車内のあちこちを見回したが、諦めたように戻ってきた。
「このまま、積むしかないね」
「まじですか?ってか、これどこに置いとくんですか?」
「そもそも、これを持ってホテルに入れるかな?」
颯介と祐斗が悩んでいると、西原がジャケットを脱いだ。躊躇いもせず、太い腕を掴むと、ジャケットでくるっと包むと颯介に手渡した。
「捜査資料ですからね」




