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3話
「むつ、大丈夫か?」
西原の声が下から聞こえた。むつが返事をしないでいると、ゆっくりと背中を押されるようにして上体を起こされた。
「これ…」
むつの身体を絞めている腕を西原と颯介の二人がかりで引き剥がした。切り落とされたというのに、男二人がかりでないと取れないというのは、相当の力がむつに加えられていたという事だろう。
大きく息を吸い込んだむつは、そのままぐったりともたれ掛かった。
「むつ?」
落下してきたむつの下敷きとなり、今はむつを後ろから支えるように抱き締めているのは、西原だった。
「大丈夫、ありがと」
むつは西原の胸に顔を押し付けたまま、何とか声を絞り出した。
「湯野です、玉奥回収しました。今夜はもう無理です」
颯介が篠田と冬四郎に連絡を入れた。イヤホン越しに溜め息のような安堵したような息遣いが聞こえた。
『むつさんの様子は?』
「無事ですが、病院に搬送しないと」
むつはまだ荒く呼吸をしているだけで、西原の胸から顔を上げようともしなかった。
 




