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3話
颯介の溜め息まじりの諌めるような声が聞こえたが、むつは無視した。
「仕方ないのぅ」
ぶんっと足を掴んだまま投げられ、落下していく時に片車輪の腕の中に落ちた。米俵でも担ぐように持たれたむつは、片車輪の野太い腕で腹を打ちむせた。
「これなら、良いかのぅ?」
「さっきよりは…腹打って痛い」
「わがままな」
「わがまま、違う。女性には優しくするもんだって」
むつが文句を言うと、片車輪は困ったように眉尻を下げた。
「そんな事より…何してんの?」
「何っておめぇ、おめぇこそ何だ?あの炎で、わしを殺す気でもあったか?」
「殺すってより、止まるかと思って」
片車輪がぎょろっとむつを見た。だが、むつは平然としている。そんなむつの様子が気に入ったのか、片車輪はげたげたと笑っている。
「下ろして、止まれ」
「嫌なこった」
がはははと大口を開けて片車輪は笑うとスピードをあげた。
 




