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3話
むつの愚痴はみんなにも聞こえたようで、笑い声も溜め息も聞こえた。
むつは、ゴーグルを首にかけヘルメットを外すときっと正面を見据えた。ごおぉぉっと凄い音が聞こえてくる。大型のバイクでも、こんな音は出ない。
『合流した、無理しないように』
颯介の声が聞こえた。それと同時にむつは叫んだ。
「ノウマク・サンマンダ・バザランダ・カンっ‼」
つきだした両掌から炎が吹き出した。真っ直ぐに向かってくる炎の纏った車輪に、むつの生み出した炎が凄い勢いで向かっていく。
炎がぶつかり合った衝撃で、風がうまれむつの髪の毛が舞い上がり、砂埃で視界が悪くなった。ゴーグルを外していたのがよくなかった。
「やばっ」
砂埃に目を細めていたせいで、あまり見えていなかったがすぐ目の前まで車輪が迫っていた。本当に水車の車輪のような大きさだった。
むつは横に転がるようにして逃げたが、遅かった。ぶつかるような衝撃を受けて呻いた。
『むつっ‼大丈夫か?』
冬四郎の焦った声が聞こえていたが、むつは返事も出来なかった。




