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1話
再び山上に頭をはたかれた篠田は、それでもニコニコしていた。むつは、そんな篠田を見て少しだけ、不思議に思った。
「うーん?どかに行こうか?むつ、何か食べたい物とかあるか?」
やけに優し気な山上を見て、冬四郎は何だか気持ち悪く思ったが、またはたかれたくはなかったので、黙っていた。
「別にない…てか、外に出なくてもそっちのブースに入っちゃえば良いんじゃないの?」
むつがそう言うと、冬四郎と篠田は顔を見合わせた。確かに言われてみれば、そうなのかもしれない。
だが、山上はそれを反対した。腹も減ってるのかもしれないが、それより外に出たそうな雰囲気だった。
「それなら…何でも良いなら、私がよく行く所でも良い?」
「因みに何屋さん?」
冬四郎はむつと距離を置いたまま聞いた。
「鉄板焼、居酒屋だけど昼間も開けてるの。個室だし、だいたい閑古鳥が鳴いてる」