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3話
『むつ、悪い小僧どもが邪魔だ遅れた』
耳につけていたイヤホンから冬四郎の少し、苛立ったような声が聞こえた。むつは、服の襟元につけていたマイクを少しだけ持ち上げた。
「突っ切ってるだけ?」
『あぁ、襲う事なくな。ホントの走り屋だな』
冬四郎の呆れた様な声に、むつは少しだけ口元を緩めた。他にも誰か笑ったのか、忍び笑いのような声が聞こえた。
あまり、緊張感のない仕事だと思いつつも、むつはハンドルをぎゅっと握った。
「目視出来た、正面…どうしよ」
『えぇ‼対策は?』
「考えてない…ってかデカい」
むつは、さらにスピードを落とした。正面からぶつかって無事で済むとは、とてもじゃないが思えない。
「颯介さん、西原先輩と合流。バリケードを」
『分かった。どうする?』
「とりあえず、当たって砕けろ作戦」
『行き当たりばったり作戦だな、拾いきれるかな?』
「任せた‼」
むつはバイクを停めて降りると、正面から向かってくる炎の塊を見た。想像以上にスピードがあるし、大きい。
「デカイのが流行りかよ」




