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3話
国道というわりには、車通りも街灯も少ない道をそれぞれ車に乗り、目的地点まで向かう。
むつはゆっくりバイクを停めた。舗装された道を外れ、草の繁っている木の影に隠れるようにしてスタンドを下ろした。
バイクを支えたが降りようとはせずに座っていた。車みたいに背もたれが有るわけではないのが、些か不満ではあったが仕方ない。
シートの上で胡座をかいて、携帯を取り出して時刻を確認した。まだ21時を少し過ぎた頃だった。
昼間には車も通り、人の声が聞こえていたが、今聞こえてくるのは微かな虫の音と遠くから波の音がするのみだった。
真夏の夜は蒸し暑く、流石にパーカーの袖をまくりジッパーを下げて身体に風が当たるようにした。
トランシーバーが微かな雑音を立てた。
『宮前です、暴走族が大量で通れないのと明るすぎて物の見分けがつきそうにない』
「近くまで行ってるなら、少し離れて待機で」
『了解』
むつはタバコのくわえて、ぼんやりと空を眺めていた。星が輝いているのがよく分かる。空気が綺麗な証拠だ。
一人でバイクの上で待つのは、退屈で仕方なかった。だが、これも仕事だ。




