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3話
「あれ、むっちゃん先に部屋戻ったのかな?」
ホテルの駐車場に車を停めると、先に停めてあるバイクのそばには、むつも管狐も居なかった。
「これ、置いて行くってよっぽどですよ」
祐斗は後部座席から、むつの日本刀を取り出して颯介に見せた。颯介も首を傾げていた。
「ま、また会うんだし祐斗君持っといて」
「えーっ。これ何か怖いんですよね」
嫌そうな顔をしつつも、むつの物だと思うと大事に扱わなくてはいけない気持ちになるのか、祐斗はしっかり握っていた。
エレベーターで6階にあがり、それぞれ部屋に入っていった。颯介は部屋に入る前に、むつの部屋の方を見たが管狐の気配はなかった。もしかしたら、部屋には戻っていないのかもしれないと思った。
待ち合わせの10分前になり、祐斗はのろのろと部屋を出た。部屋を出たり入ったりで、何だか疲れるなと思いつつも、仕事はこれからだ、と思うと気を引き締めた。むつの大切な日本刀を持ち、エレベーターで下に降りると、むつと西原以外はすでに揃っていた。




